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シュレディンガーの猫を、僕は生きていると信じたい。
――― 平井 裕真
春先の、少し湿り気を帯びたそよ風を受けて、彼は長い長い夢から目を醒ます。
彼の名は、二十八数樹(はたやかずき)。
どこにでもありそうな、ありふれた名前。
彼の住む街の名は、レム。
ちょっと少女趣味だけれど、平和で過ごしやすい街。
世話になってる宿の若女将に引っ張り回されたり、気の良い仲間といろんな話をしたり、
好みの甘い物も食べられる。
どこか夢心地で、何のしがらみもない、怠情ながらも平和な日常。
彼はそんな日常を求めていた。
確かに求めてきた……はず。
――― でも、そこになぜか空しさが込み上げて来るのは何故だろう?
茜色に染まった空が綺麗だったので、ふと彼は散歩を始めることにした。
いつも見慣れてる街の光景のはずなのに、どこか懐かしく、いとおしい感覚を覚えた。
生ぬるい水の中に浸かっているような、不思議な感じ。
そんなまどろみの中で、彼は彼女に出会った。
――― それは、つまり、夢の終わり。
それは、つまり、夢の始まり。
彼女の虚ろな瞳は、彼の身体の、その遥か奥にあるどこかを見つめていた ―――。
...................................................................
虚実の交わる、この物語の世界へようこそ。
蒼穹より、悠久へいざなう数片の夢芝居。
――― 言うなれば、これは誰かの見ている夢。
そして『彼』自身が見た幻想でもあり。
遠い遠い、幻実だか現想だかわからぬ記憶の底で、それでも確かに聞いたことのある声が、ひとつ。
『……私と一緒に、素敵な夢を見ましょう。』
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全六章からなる物語のうちの一つ。位置づけ的にはプロローグ。
なので点数表示はなし。
テキストは全画面に表示されるノベルゲーム形式。
会話地の文共に砕けており読みやすい。
ゲーム中のプレイ期間は一週間しかないが一つ一つのシーンがとても丁寧に作りこまれている印象を受けた。
登場人物は10代後半から20代後半。
日常会話はやたらハイテンションで、年齢の割に幼いなという印象を受けた。
受け止め方は人それぞれなので欠点と言うよりは特徴、かもしれない。
程度を言っておくと、ひぐらしほどのものではない。
この作品最大の長所は読み手に対する引き込み方の上手さ。
序盤から日常をプレイするにつれていくつか「?」と思う箇所がいくつかある。
明確な答えは提示されないがある程度推察させる余地を残してくれているのが憎い。
お陰で先が気になって仕方が無い。
また、この作品では物語を別視点から見た「DPS」というシステムがあるのだがそれがまた上手い。
DPSには二種類ある。便宜上「表」と「裏」としよう。
「表」のDPSは上述の通り物語を主人公以外の視点から見たもの。
これはさほど必要性は感じないのだが、凄いのは「裏」
「裏」は一見関係なさそうに見えるシーンだったり製作者からのメッセージだったりする。
これらの情報のお陰で読み手は余計に色々推察してしまい、先が気になる。
何度も言うが憎い演出だと思う。
続きが気になって仕方が無い。早く出ないかな。
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| グラフィック |
差分抜きでイベントCGは24枚。
立ち絵・イベントCG共に斜めから見た構図の時バランスが大きく崩れるのが欠点。
またヒロインらの線が細すぎる。ガリガリってレベルじゃねーぞ!
正面からの構図の立ち絵などは表情豊かで人間味がある。
最大の長所は淡い塗りによる雰囲気の良さ。
背景は写真を加工したものだろうか?
ラフ画のようなタッチが加えられておりとても味がある。
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| 音楽 |
全部で32曲。ボーカルはなし。
音楽制作はシナリオライターであるチカゲさんが行ったようだが素晴らしいクオリティ。
どちらもハイレベルに出来るとは何というマルチタレント…
全てが高いレベルでまとまっておりBGM単体としても相当高レベル。
そこらの企業のものを軽く凌駕している。点数で言えば90点くらい。
ボイスは冒頭部を除き一切無し。
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| システム |
NScripter。
セーブロード:サムネイルと日付表示あり。
バックログ:可
スキップ:既読判定あり。ただし途中で止まることがある。
オートモード:有。速度を細かく設定可能。
鑑賞モード:CG、音楽、DPS鑑賞モードあり。
右クリック:メニュー呼び出し
地味にカーソル自動移動機能があるのが便利。
読む上で大きな問題点はない。
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| 総評 |
多少の欠点はあるが、描こうとしているものへの期待度がそれを大きく上回る。
話のスケールの大きさやテーマなど様々な部分で期待できる。「読ませる作品」だと思う。
DPSに込めたメッセージが憎たらしい←褒め言葉
まだプロローグの段階なので得点はつけていないが、無理やりつけるとすれば75〜80点くらいか。
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