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全十三話連作短編ノベル「収穫の十二月」
第一話----- 収穫の十二月
豪雪地帯で有名な町、多紙町。
その町に神がおり、住民は神の存在を当然のように受け止めている場所だった。
両親の仕事の都合で多紙町に引っ越してきた日、紺野柾木は多紙町の神しろに夫婦になるよう告白される。
勢いに飲まれた柾木はしろの願いを受け入れてしまう。
その次の日、転校の手続きに学校に向かったとき、多紙町で権力を振るう十和田家の令嬢、雪は柾木に一目惚れをしてその場で告白。
柾木はまた受け入れてしまう。
こうして神と人、二人の少女に挟まれた、奇妙な三角関係が始まった。
友人たちにも囲まれ、にぎやかな日々を過ごしてゆく。
多紙町での暮らしにも慣れたある日、雪は一つの提案をする。
「君とのややこ(赤ん坊)がほしい」
この一言が柾木たちの日々を大きく変えてゆく。
第二話----- 境域の一月
年が明けてから数日後、柾木と遠山瑞穂は多紙町と隣町の酒島町の境にある酒島神社へ、初詣に出かけた。
そこで酒島町の土地神、まどいと出会う。
自分の住まう土地の外に出てはならない、そんな土地神のルールを破ってまで、まどいは多紙町にやってきた。
探し物がある、そう言って泣いてしまうまどいの姿に、瑞穂は協力を申し出る。
瑞穂は柾木を巻きこんで遠山瑞穂探検隊を結成、まどいと一緒に調査を開始した。
調査が進んでゆくとき、まどいは倒れてしまう。
第三話----- 贈与の二月
特別な十二月から二ヶ月、森野早苗は遠山耕平への想いを打ち明けられずにいた。
早苗は紺野柾木に相談を持ちかける。柾木はバレンタインデーに告白するよう説得する。
告白のタイミングを狙うために、早苗は柾木と行動するようになる。
耕平に思いを寄せる少女は早苗だけではなかった。
上杉もより、田上桜もまた早苗と同じくバレンタインデーに告白を狙っていた。
早苗はライバルの登場にとまどう中、柾木は早苗のために作戦を考える。
第四話----- 恋々の三月
アルバイトに精を出していた柾木は、雪の母である十和田真白からアルバイトの提案をされる。
条件の良さに引き受けたアルバイトは、ベビーシッターだった。
しかも、母親役として雪をパートナーにしなければならないことに、柾木は頭を痛める。
柾木と一緒に赤ん坊の恋(れん)の世話ができることに張り切る雪に対して、柾木は機械的に恋の面倒を見る。
冷たい態度を取る柾木と、愛情を注ごうとして失敗する雪との間ですれ違いが起こり、対立してゆく。
第五話----- 青嵐の四月>
多紙町に春がやってきた。
季節が巡っても、柾木、雪、しろの三角関係は続いていた。
そんな柾木のもとに、都会に住んでいた頃の彼女、蒼が追いかけてきた。
三角関係が四角関係に、柾木は胃痛に悩まされるようになってゆく。
都会に住んでいた頃の柾木、蒼の秘密が明かされ、三角関係を維持し続けていた理由が明かされる。
第六話----- 闘劇の五月
隣町の土地神まどいがすっかり多紙町になじんだ頃、まどいの姉まよいは、しろを倒すために多紙町にやってくる。
しかし、まよいの目的はすでに惑いが解決してしまっていたため、目的を失ったまよいは失意の日々を送るようになる。
まよいを力づけてほしい、弟のまどいは柾木に頼み、柾木はその願いを引き受ける。
柾木はまよいにとって必要なのは、目的と考えた。
まよいは神の奇跡を機械にして、誰でも使えるようにする才能があり、柾木は彼女の技術や理論に魅力を感じる。
柾木は多くの時間をまよいと過ごすようになったある日、二人の元にしろがやってくる。
第七話----- 婚儀の六月
梅雨の季節、遠山耕平は森野早苗の家でアルバイトをしていた。
バレンタインデーから四ヶ月、二人の関係はずっと停まったままだった。
事実はそうではなく、早苗を意識してしまった耕平は今の関係が壊れてしまうことを怖れ、つかず離れずの関係を引き延ばしていた。
二人の関係を心配した早苗の母の裕美は、耕平に一つの試練を下す。
それは、多紙町独特の結婚式に必要な介添人を選ばせることだった。介添人は好きな女の子を選ばなければならない。
森野早苗、上杉もより、田上桜、その三人から選ばなければならない。
六月の花嫁、そんな言葉を噛みしめ、遠山耕平の試練が始まった。
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プレイ期間が1年、登場人物は10人以上という非常に規模の大きな物語。
規模が大きい割に物語は地盤がしっかりしており、最初から最後までぶれない。
地の文・会話文共にロジカルで、時折難しめの表現や婉曲的な表現などを用い読み手の興味を引き付ける。
会話には野暮ったさがなく、台詞と台詞の間にもあたかも台詞があるかのようなやり取りが見られることも。
会話と地の文のコンビネーションが非常に上手い。
物語は十二月から始まり、その後一月単位で進む。
月によって物語の「色」が異なり、読み手を飽きさせない。
季節と関連性のあるイベントが盛り込まれていることで季節感があり、一年間を飽きずにプレイ出来る。
また月により視点が切り替わりそれに伴い物語の主題も変わる。
お陰で常に新鮮さがあり、また伏線が徐々に増えてゆき後半で回収されるという展開の妙がある。
シリアスとコメディのメリハリがしっかりしていることも読み手を飽きさせない理由の一つと言える。
各キャラ共に個性がはっきりしており、それぞれのスタンスは最後までぶれない。
そのぶれないスタンスの上にゲームならではのぶっ飛んだギャグシーンがあり、見せ方にもメリハリが利いているためとても面白い。
新たな月になる度に登場人物が増え、惜しげもなく立ち絵が追加される太っ腹っぷりには感服の一言。
特に夏は非常に多くのキャラが追加されそれまでとはかなり異なる展開の物語となる。
全体の中でちょうど半分過ぎくらいにあたり、状況が大きく変わることで読み手の好奇心を再び煽るのに一躍買っている。
また、各月のサブタイトルはギャグが利いていたり韻を踏んでいたり今までの流れをなぞっていたりと、様々な小技が使われているのも効果的と言える。
特にラストの「収斂の十二月」の収束させ方、そしてエピローグは見事の一言に尽きる。
意味のない要素が一つもない、という印象。
全てを何かしらの意味を持たせて活用している。
個人的に最も評価したいのは、登場人物が皆物語の主人公であること。
主人公は一応柾木ということにはなっているものの、上述のように月によって視点が異なり主題も異なる。
比率的には柾木の活躍が確かに目立つがどの話でも主要な登場人物たちはそれぞれの味を発揮し、脇役に留まっていない。
彼らには彼らの思惑と物語がありそれがしっかりと描かれていた。
規模、深さ、広さ。どれを取っても超一級品の作品と言える。
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| グラフィック |
各月差分を含まず10〜20枚ほど。作品全体として見るとかなりの枚数。
原画はフリーのイラストレーターとしても活躍している上田夢人さん。
上手すぎて何の欠点も思いつかない。
リアルな等身と豊かな表情変化やポーズもさることながら、シナリオの部分でも述べたように
毎月惜しげもなく登場人物とその立ち絵を増やしたその心意気に乾杯。
色鮮やかなはっきりとした塗りも文句なしの出来。
カットインなどは多少あるが演出面は割と普通。
そこまで求めるのは酷というものか。
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| 音楽 |
毎月1曲、合計5曲のボーカルを含め全部で41曲。
数が多いのは見ての通り。質も企業顔負け。
使用楽器数が多くBGMはいずれも場の雰囲気にあったもの。
中でも「開幕」を始めとする「収穫の十二月」がBGMアレンジされたものや、戦闘シーンで流れる「決起」は素晴らしい。
ボーカルは上記のように5曲。
いずれも同人レベルではないが、個人的には最初の「収穫の十二月」がツボ。
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| システム |
Nスク。
バックログ:有
スキップ:有(次の選択肢/未読まで進む)
セーブロード:日付、サブタイトル表示
オートセーブ:無
クイックセーブ:無
オートモード:有(速度調節可能)
特に不備なし。
シンプルで使いやすい。
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| 総評 |
一粒で一体何粒楽しませてくれるんだと言いたくなる作品。
プレイ開始当初は単なるハーレムゲーかと思いきや、実は伝奇や戦闘など多くの要素が詰め込まれた作品だった。
脚本が素晴らしいの一言に尽きる。
シナリオだけでなく絵や音楽も一級品。人を選ぶ内容でもないので是非とも多くの人にプレイして欲しい。
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